石綿(Asbestos

俳優のスティ-ブ・マックウィ-ンは石綿と関連の深い、悪性胸膜中皮腫という胸膜の悪性腫瘍で亡くなりました。拳銃、車のブレ-キ、軍艦、潜水艦と石綿に関係のあるものの中で彼の撮影がなされていたのです。

石綿が古くから使われていたことは、竹取物語の記事でわかります。あの安部の右大臣にかぐや姫が注文を出した、天竺にあるという「燃えない布(火鼠の皮衣)」が石綿(Asbestos)です。もっとも物語の中ではあへなく(安部なく)燃えてしまったので石綿ではなかったのですが。

ギリシャ語で「消えない」という意味のασβεστοσが、なぜか燃えないになって使われはじめました。

テサロニケ人への第一の手紙五章一九節に「御霊を消してはなりません。」という文があります。「消す」という語にはスベンニューテ(σβεννυτε)が使用されています。この言葉に否定形のαが付いて更に変化したものがασβεστοσ(asbestos)です。「消せない」とか「消えない」という意味のアスベストスは「燃やしても消えない綿」、即ち「石綿」になったのだと思います。

ここで「御霊」に使われている語がプニューマ(πνευμα)で肺という意味があるのは前に触れました。従ってテサロニケ人への第一の手紙五章一九節は肺と石綿が出てきており、さしずめ石綿肺の聖句です。

聖書にはもう二箇所アスベストに関連した句があります。マルコによる福音書九章四三節の「ゲヘナの消えぬ火」のところと、マタイの福音書二五章八節の十人の乙女の話の場所ですが、「私たちのともしびは消えそうです。」のところです。

ところで石綿と関連の深い俳優たちがまだほかにもいます。彼らは肺癌で死んだ人たちです。ゲ-リ-・ク-パ-おぼえていますか。ヘビ-スモ-カ-だった彼は肺癌から見捨てられませんでした。(Do not forsake me, oh my cancer.) くわえタバコが渋いク-パ-には、石綿と成分の近い西部の砂塵が彼の肺癌形成に力を貸していたと考えられます。

石綿と喫煙が重なると肺癌発生率は十倍にもはねあがります。

ジョン・ウェインも肺癌です。ネバダの砂漠の土が石綿と関係があるのです。駅馬車をはじめとして彼の鼻のまわりには、常に砂塵が舞っていました。その砂塵は珪酸結晶でして、石綿の線維の間にくっついている微粒子と性格が似ているのです。

鼻から入った石綿線維とその微粒子は線毛細胞,分泌細胞たちの必死の排除にも拘らず肺胞へ到達します。肺胞にはよそものが入って来るとそれを排除するスカベンジヤ-たちがあらわれて来ます。彼らはマクロファ-ジ、日本語にすると「大食細胞」です。何でも食いつくという頼もしい細胞ですが、石綿線維に食いついて、しがみついて、そしてそのまま死んで固まります。これが石綿小体といって石綿を取扱う人々の肺の中に、それこそ五万と入っています。

一人の石綿患者の肺をみたところ、石綿小体のあまりの多さに驚き、数を数えてみましたら、なんと一平方cmあたり二七二四個もありました。この計算でいくと、この人は肺は五万どころか一億個以上の石綿線維を持っていたことになります。この人は石綿微粒子は数えきれません。星の数ほどになります。恐ろしいのはこの線維よりも、大食細胞でくわれて体内(肺胞内はまだ体の外なのです)に運びこまれるこの小さな結晶成分です。大食細胞に食われた石綿微粒子は胸膜腔やリンパ節、さらには腹膜から肝臓に至たるまで移動することが出来るのです。

一方、最初の生命の誕生は海岸のアパタイトの上だったと、ノーマンさんは考えています。なぜならアパタイトはアミノ酸などを吸着するからです。吸着されたアミノ酸は蛋白質を作り、細胞を形成し、そして生命は誕生するという理論です。リン酸カルシウムのアパタイトにアミノ酸が吸着されたのと同じように、発癌物質が石綿微粒子に吸着されると、肺の末梢部に高濃度の発癌物質が蓄積することになります。ここが石綿と肺癌の結びつく点です。息と一緒に入る発癌物質が、肺の外の壁側胸膜にまで悪性腫瘍を作ることも、この考えを取り入れればいっぺんに解決です。

石油化学と病気

BC五千年、モ-セが生まれた時のエジプト王パロは、イスラエルの男の子を悉く川に投げ入れるよう、命じていました。モ-セの母親も、生まれたばかりのモ-セを川に入れるのですが、そこで使われたのがアスファルト。蘆の箱舟に瀝青と樹脂を塗ってモ-セをいれ、ナイルの岸の葦の茂みの中に置いた。(出エジプト記二章三節)もう一か所、アスファルトが使われています。バベルの塔の石漆です。(創世記一一章三節)レンガとレンガを結びつけるためにアスファルトが必要でした。でもこの塔のために、それまで一つの言葉だった世界が何千もの言語に別れてしまいました。それが何千年もの歴史に影響をおよぼし、現代の私たちまで他国語を学ばなければならない苦しみを味わっています。

このように、良いことにも悪いことにも使われたアスファルトは、現代の医療においても善悪の二つの面を持っています。アスファルトの成分のタ-ルは、皮膚病を治す薬として軟膏の中に入っている一方、アスファルトの中のベンズピレンは発癌物質です。

石油化学の発達は私たちの周囲を化学物質で包囲しました。食品添加物、合成着色料、防腐剤、飼料に添加される抗生物質等です。これらの化学物質が体の中に入ると主として肝臓の代謝酵素が誘導され、その物質を解毒をします。しかし、この代謝機構が化学物質を代謝する課程でなんとそれらを発癌物質に変えてしまうことがあるのです。

アスファルトにも両面があるように、体の中のアスファルトなどの化学物質を代謝する機構にも二つの面があるのは不思議な偶然でしょうか。

A.はれもの

旧約聖書には『がん』という言葉は出てきません。しかし、いろいろな場面で、腫れ物の記載がみられます。最初は出エジプト記の「うみの出る腫物」です。

「そこで彼らはかまどのすすを取ってパロの前に立ち、モーセはそれを天に向けてまき散らした、。するとそれは人と獣につき、うみの出る腫物となった。」(出エジプト記九章十節)かまどのすすをまき散らしたら、不思議にもエジプト人にだけ化膿性の腫物ができました。この化膿性のはれものはは癌ではありません。かまどのすすの中には化膿をひきおこす細菌はいないのですが、これがうみの出るはれものをつくるなんて、なんとも不思議なパロへのいやがらせです。

二番目も炎症性でハンセン病のときに見られる腫物です。レビ記一三章一八~一九節にでてきます。身の皮の白い腫れで、確かに癩のときには、白い斑ができて結節を作りますが、これも癌ではありません。

ヒゼキヤのはれもの

三番目はアハズの子ヒゼキア王にできた腫物です。(列王記二〇章七節)彼は死の床に横たわっていました。これはまさしく癌だった、と思われますが興味深いことに彼は「干しいちじく」で一五年間長生きしました。神様が特別に一五年間よわいを増すといわれたのは、ヒゼキアが癌だったからでしょう。

干しいちじくは木くらげの成分に似て、カルシウムと糖質を多くもっています。最近キノコの成分が癌の予防と治療に良さそうだ、という報告が出てきました。サルノコシカケ科カワラタケの菌体成分から癌の免疫抑制剤が作られたりするのを聞くと、キノコの成分に近いこの干しいちじくも、癌に効きそうな感じがします。

ヨブのはれもの

最後に決定版はヨブにできた腫瘍です。(ヨブ記二章七節)「神をのろって死になさい。(ヨブ記二章九節)」というヨブの妻の言葉をものともせず、ヨブはそれに耐えました。足の裏から頭の頂きまでゴロゴロとできた腫瘍はたぶん神経線維腫症で、良性の腫瘍でしょう。悪性の癌でなかった証拠にヨブは長生きをしています。

結局、「あなたは癌です!」と宣告されたときに、「私たちは幸いを神から幸を受けるだから、わざわいをも受けなければならないではないか。(ヨブ記二章十一節)」というヨブの言葉が、癌と対決する武器になるでしょう。

新約聖書の癌

さて、腫瘍という言葉ではなく癌という言葉は聖書の中にあるでしょうか?日本語の聖書は一か所『癌』という語を使っています。それは新約聖書テモテへの第二の手紙二章一七節です。「俗悪なむだ話を避けなさい。人々はそれによってますます不敬虔に深入りし、彼らの話は癌のように広がるのです。」当時、癌という病気が小アジアにあったかどうか確かめる方法はありません。まだ病理学的検査がなかった時代ですから。ギリシャ語の聖書ではガングライナ(γανγραινα)で直訳すると「脱疽」になります。現在でも脱疽のことを英語で gangrane といいます。癌も、脱疽も、腐れひろがることに変わりはありませんので、ここの文の本意は異なりません。

癌と罪

 

パウロが癌の実体を知っていたら、彼はいろいろな比喩に使っていたと思います。なぜなら癌ほど罪と類似点の多いものはないからです。

ここで癌の性格を見てみます。

一.癌は正常な組織から発生する。

二.小さいうちに取り除けば大事にいたらない。

三.放っておくと、だんだん大きくなり、種々の方向へ転移し、ついにはその宿主を死に至らしめる。
の三点です。

この性格は罪の性格に置き換えても、おかしくはありません。

正常の細胞が突然増殖の激しい細胞に変わり、、自分勝手な増殖をしはじめ、組織や臓器の秩序を破壊し、勝手に栄養をとり、全身に転移し、遂には体に死をもたらすのが癌です。

現在のところ、殆どの癌は死に至るものです。幸運にも小さいうちに発見され、取り除かれた胃癌や肺癌症例でも十年生きることは希です。原因に関してもわかっているものは少なく、この分野でも多くの研究者が日夜努力を重ねています。

罪はその人を滅ぼします。(罪の報酬は死である。ロ-マ六章二三節)しかしそれだけでなく、他の人を巻き込むこともしばしばです。悪性腫瘍の中のあるもの、成人型T細胞白血病やカポジ肉腫なども、ウイルス原因説が有力ですから、他の人に感染する可能性があるわけです。

良性腫瘍で過誤腫というのがあります。二種類の成分が勝手に増殖してしまいますが転移しない腫瘍ですので良性です。間違って増殖したと言うことでハマルトーマという名前がついています。罪という言葉のアマルチア(αμαρτια)と同じ語源です。