木村 雄二 と 知珂子
ビタミン
食品成分の中で、主栄養素と水以外の、動物の発育と栄養を保つのに不可欠な、微量の有機物の総称が、ビタミンです。
エネルギー源にはならず、代謝に関与するもので、基本的には体内で合成されません。従って、外からの摂取が不十分だと、欠乏症に陥ります。
自然食品の比率が低くなり、食品添加物の増えた我々の食事には、ビタミンが欠乏しがちです。ビタミンの種類によって、それぞれ異なる病気が出現してきますが、中でもビタミンＡ、Ｃ、そしてＥは癌と関係してきます。
ビタミンＡ欠乏症は、暗順応障害、夜盲、角膜乾燥などの目の病気になります。ビタミンＡは、肝油とかウナギ、バター、鶏卵に含まれており、緑葉菜、ニンジン、カボチャ、黄色トウモロコシにはビタミンＡ前駆体のカロチンが含まれています。
ビタミンＢ欠乏は、脚気、口角炎、脂漏性皮膚炎、貧血になります。穀物の種芽、糠および酵母、豆類、肝、肉、卵黄にビタミンＢは入っています。アーモンドにはＢ2 が沢山入っています。
ビタミンＣは新鮮な野菜、果物、緑茶に多く含まれていますので、壊血病や人工栄養児に見られる骨端離断による出血、下肢痛による仮性麻痺（Moller-Barlow 病) を防ぎます。
ビタミンＤ欠乏はくる病になります。バター、卵黄、魚肉、肝臓などの中にビタミンＤは含まれています。逆に多すぎてもカルシウムの沈着をきたします。
ビタミンＥは植物油に多く含まれています。ビタミンＥの欠乏で不妊、習慣性流産、筋萎縮症、精子欠如症などが起こることが認められています。
ビタミンＨは別名ビオチンといい、肝、トマト、ニンジン、卵黄などに存在し、その欠乏は皮膚炎、舌乳頭の萎縮などひきおこします。
ビタミンＫは抗出血作用を持っています。緑葉野菜、大豆油、種子、果物、根菜がビタミンＫを含有します。
その他ビタミンＦ、Ｇ、Ｉ、Ｊ、Ｌ、Ｍ、Ｐ、Ｕなどが発見、研究されていますが、ビタミンとして取り扱わないことが多いようです。
ビタミンＡが欠乏すると皮膚が荒れてきます。皮膚だけでなく、肺の気管支の表面も皮膚のようになってしまい、ついには肺癌ができるだろうとブジュルゲさんたちは報告しました。
ビタミンＣは発癌物質ニトロソアミンの生成を抑えます。即ち、亜硝酸ナトリウムとアミンが反応して、ニトロソアミンができますが、その反応をブロックします。
ビタミンＥはその還元作用で、酸化作用によってできる癌刺激を緩和します。
ビタミンB2とナイアシン、そして無機質ではカルシウム、リンを多く含むア－モンドを捜して、聖書のなかを旅してみました。原産地メソポタミアからエジプトへ渡ったのは、ヤコブとヨセフの第一次中東和平の時です。（創世記四三章一一節）クレオパトラのアイシャドウにも間に合いました。
ア―モンドを焼いて作った墨は、女性の目を砂漠の強烈な日差しからその瞳を守り、そしてその目を飾るアイコスメティクにもなります。もし、メソポタミアからア―モンドがエジプトに移らなかったら、あの歴史を変えたクレオパトラも歴史に加わらなかったのではないでしょうか。ビタミンを持っているア－モンドは、内と外から眼を守ります。ビタミンＡは視力障害にも効力がありますから。
アロンの杖もアーモンドで、アロンと一緒にカナンの地に入ります。（民数記一六章八節）イスラエルには、今でもア－モンドの花が咲いています。ひょっとしたら、例の契約の箱もア－モンドかも知れません。
ア―モンドはギリシャからドイツへ渡り、ドイツでマンデルと名前を変え、医学と音楽に変身しました。医学では、マンデルドゥリゥ―ゼ（扁桃腺）、喉の奥の二つの感染防御の砦として名残りをとどめ、そしてクリ－ムになったア－モンドは皮膚病に使われます。
音楽になったのは、ア－モンドの形をしたマンドリンです。
フランスではアマンド、オ－ブンの中でパンやクッキ－に変身します。プロバンス地方のエックス村では、古くからアーモンドのお菓子を作っていました。伝統の銘菓、ビスキュイ・デックス（biscuit d'aix）です。マジパンもほとんどアーモンドです。マリ－・アントワネットがウィ－ンから持って行ったア－モンド入りモ－ニングブレッドは、パリでも流行しました。
一方メソポタミアから東へ向かったア－モンドは、中国で豆腐になります。あの杏仁豆腐です。
アメリカに渡ったアーモンドは、カリフォルニアで花開き、今では世界一の生産を誇っています。毎年、ミス・アーモンドが誕生しているようです。
日本は扁桃腺をドイツから、お菓子をフランスから、そして豆腐は中国から取り入れました。例によって日本人は加工が好きです。アーモンドチョコレートは日本の子供たちに大うけです。ア－モンドの実の方はアメリカから輸入して、今や世界で五番目の消費国になっています。
ア－モンドには二種類あって、ピンクの花が咲くのがスウィ－ト・ア－モンド、ビタ－・ア－モンドには、白い花が咲きます。苦労を重ねると白い花が咲きますよね、私たちの頭にも。（伝道者の書一二章五節）。白い花の咲いた方の前では直立しなければいけない、と伝道者の書は励めています。
ここでお肌の荒れを防ぎ、肺癌の予防にもなるア－モンド料理を紹介いたします。ア－モンドの湯豆腐とほうれん草のア－モンドあえ、メインはア－モンドの衣のついたトンカツです。そうそう子供たちにはア－モンド・ハンバ－グにしましょう。デザ－トにはもちろん杏仁豆腐で、ついでに明日の朝食はマリ－・アントワネット風ア－モンド入りモ－ニング・ブレッドなどいかがですか？ 来週は忙しくなりそうだなぁ、と思ったら、ビスキュイ・デックスを焼いておけば、三時の貴女はもう余裕クシャクシャです。
忘れていました、食前の感謝はア－モンドを下さった神様に。