カ―レ―スが盛んになってきた昨今、プロレ―サ―でなくてもレ―スをする事が頻繁になっています。アマチュアレ―サ―が、雨の中のレ―スでスリップしてしまいました。車は反転、コ―ス中央の泥沼の中に突っ込んだのです。泥水は、逆様になったレ―サ―の頭から鼻までに及んでいます。さらに困ったことに、そのレ―サ―には意識がありません。泥水は鼻から気管へ、そして肺へと容赦なく入っていきます。五分後にやっと救助され、救急車で病院に運ばれてきました。彼の肺の中には、泥水が入りこみ、救命救急の医師たちの、必死の治療にも拘かわらず、一七日の後亡くなりました。
解剖の結果、やはり彼の肺は泥にまみれていました。X線マイクロアナライザによる分析で泥が確認されたのです。彼の肺は泥に負けて、ついには彼の歩みをたしかにさせませんでした。詩篇の記者は「私を滅びの穴から、泥沼から、引き上げてくださった。そしてわたしの足を巌の上に置き、私の歩みを確かにされた。詩篇四0篇二節」と書いていますが、この詩篇の記者とレーサーでは吸いこんだ泥の量が違ったのか、泥の成分が異なったのか、それとも神への信仰が異なったのかわかりませんが、とにかく泥沼では人間は生きられません。泥沼の中で生きていけるのは、むつごろうか肺魚ぐらいです。肺魚は肺のほかに、えらからでも酸素を取り入れることができますから。
それにしても肺魚が魚類では一番下等だなんて、どなたがお決めになったのでしょうか?生物の臓器の中で、最も新しいものが肺であるのに、進化論者は被造物たちに勝手な解釈をつけています。
ところで例のノアの洪水の時に、鼻から息をするものが溺れ死んだのですよね。魚は全員助かったとしても肺魚は、はたしてどうしていたのでしょう。こんど、肺魚にお会いしたときにでも、じっくり聞いてみましょう。
細菌と気管支の線毛が同じ構造だということを炭疽病のところでふれましたが、この線毛の微細構造に欠陥があると、線毛が動かなくなります。線毛不動症候群といい線毛が動かないために、いろいろな症状が出てきます。空気の中にいろいろなものが混ざると、肺は必死に抵抗します。まず気道の表面にはえている線毛上皮細胞は吸気にさからって常時波うって抵抗します。それもきれいに揃って。細胞一個には約二00個の線毛がはえています。それらは一定の方向にはえているのです。なぜその方向が分かるかって。それも私たちの先達の長い長い研究の成果です。線毛を電子顕微鏡で輪切りにしますと真ん中に一対の小管、周囲に九対の管があります。一対の小管の周りには中心・・・・という壁があり中心の小管と周囲の管とはスポ-ク(ほら自転車のスポ-クと同じです)で結びついています。周辺小管は大小二つの輪からなりその小さな輪に内外二つの腕を持っています。この周辺小管には番号がついていて二つの中心小管の中心点を結んだ線の中心で垂線をたてそれにぶつかった周辺小管が第一番です。そして時計まわりに四0度づつ第二、第三と進み、第一の四0度手前が第九番です。これで方向が定まります。正常の線毛は一定の向きでなびいています。しかし不動線毛症候群(immotile cilia syndrome)という病気の人はこの線毛が異常を示します。線毛たちが一定の方向を示さなくなったり、動きが鈍くなります。原因は周辺小管から出る内外の腕の欠損がこの病気の特徴です。
胎児はある時期に内臓を所定の位置に納めなければなりません。たとえば心臓は左に、肝臓は右に、という具合にです。この時にも線毛が必要になってくるわけですが、この線毛が動かなくなっていると、内臓が逆の位置になります。内臓逆位症です。精子にある鞭毛も、同じ構造をもっています。これが動かなくなると、子供ができない不妊症、男性不妊になってしまいます。しばしば鼻の粘膜上皮の線毛が侵され鼻炎や副鼻腔炎が発症します。さらにこの症候群は気管支の線毛の動きも悪くなるため、気管支炎をおこしやすく、気管支炎をくりかえしていると気管支拡張症になります。塵を追い出す線毛の働きが弱ると、細菌やウィルスなども排除できないため、肺炎にかかりやすくなってしまいます。
脳の中に脳室というところがありますが、ここの表面にも線毛を持った細胞が髄液をコントロールしています。ここでも線毛の動きが重要で、線毛の働きが弱ると頭痛がおこってきます。
このように体のいろいろな部位に一連の症状がでてくる病気が、線毛不動症候群です。
考えてみると、私達の小さな小さな線毛の一本一本に、神様の御手が届いているのですね。